Contents
野球やサッカーのテレビ中継の画像をYouTubeやツイッターなどにアップするのは著作権侵害か
テレビはもちろん、最近ではパソコンやスマホを通じたネット配信でもプロ野球やサッカーなどスポーツの試合の中継が放送され、多くの人々が映像作品として日々楽しんでいます。
このスポーツ中継も、ただ一人で観ているだけでなく、今やツイッターやインスタグラムなどを通して共有し、一緒に盛り上がることも可能な時代。
たとえばサッカーの代表戦になると、ハッシュタグを使ってみんなでゴールを喜ぶ、といったことも頻繁に行われています。
このとき、サッカーのゴールシーンや、野球ならホームランの場面などの映像をツイッターなどに載せて呟くことも多いかもしれません。
この記事では、テレビ中継の画像を呟く際に、著作権の侵害になるかどうか、という点について紹介したいと思います。
野球やサッカーの中継映像は著作物?
そもそも、野球やサッカーの中継映像は、映画や写真と同じく「著作物」なのでしょうか。
まず、前提として、「試合そのもの」は著作物ではありません。
著作物の定義には、「思想または感情を創作的に表現したもの」であり、スポーツは、舞台などとは違って著作物ではないということになります。
しかし、あくまでこれは「試合そのもの」の話。
一方、この「試合を撮影したもの」は、著作物に該当します。
著作権法の著作物の例示のなかで、スポーツの映像は「映画の著作物」の一つとして考えられています。
この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
法律的で厄介な表現ですが、分解すると、「映画の著作物」には、映画以外に、①映画の効果に類似する視覚的または視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、②物に固定されている、③著作物、が含まれる、とあります。
分かりづらいのが、②の「物に固定されている」という部分ですが、これはビデオテープやフィルム、デジタルデータなどに記録されている(固定されている)という意味です。
③の「著作物」というのも、スポーツ中継の映像は、カメラマンがアングルなどをしっかり考えて選んでいる(思想や創作性を表現している)ことから、サッカーや野球などスポーツの中継映像も、映画と同じように「著作物」と見なされる、というわけです。
著作権の違反と引用
テレビやネット配信のスポーツ中継が「著作物」である以上、放送事業者が著作権を保有ししているので、全シーンをYouTubeでアップするのはもちろん著作権法に違反した、著作権侵害に当たります。
これは映画をそのまま掲載しているのと同じ、と言えるでしょう。
それでは、たとえば動画のワンシーン(ゴールやホームラン)、また静止画面などをツイッターに載せるのは著作権的にどうなのでしょうか。
ちょっとくらいの映像があったほうが、ツイッターで盛り上がるのにも最適です。
しかし、残念ながら、厳密に言えば、これも著作権侵害に当たります。
中継映像の中の任意のひとコマは、そのコマについてシャッターチャンス、シャッタースピード、絞りの選択が行われているわけではありません。
しかし、中継カメラを操作している撮影者は、刻々と変化していく野球の試合を連続的に撮影する際に、その瞬間ごとに、被写体、アングル、ライティング、構図を選択しており、その一瞬を切り取った中継映像のひとコマにも撮影者の個性が現れていると評価するのが妥当だと思います。
そうすると、中継映像のひとコマにも「創作性」は認められ、これも「著作物」という結論になるのだろうと考えています。
ただ、この辺りは、侵害されているテレビ局がどういった判断を下しているかによって違い、特にテレビ局にビジネス上の不利益がなかったり、営利目的でないかぎりは、「ある程度放任する」という可能性もあるので一概には言えません。
現代のようなSNS時代に、なにもかも厳密に著作権を適用しようとすると、相当窮屈な状況になるので、難しいバランス感覚が求められていると言えるでしょう。
また、「引用」の条件に当てはまった範囲内なら、無断使用が許される、というルールが著作権にはあります。
スポーツ中継の画像付きツイートが、「引用」の範囲内に含まれるかどうか、というのは難しいところですが、まだはっきりとした境界線はないようです。
中継映像の一瞬を撮影した画像をツイートするだけで、とくに営利目的もないのであれば、テレビ局に及ぼす悪影響もとくになさそうな気がしますし、今後、裁判所がこういった新しい判断基準によって「引用」の成否を判断するようになれば、Tさんの画像付きツイートが「引用」と認められるかもしれません。
個人的には、あまり窮屈にしても、スポーツにとってもテレビにとってもプラスにならないような気がします。
自分で撮影した試合映像は?
ちなみに、実際に試合観戦に行き、自分で撮影した映像は、ツイッターやブログ、YouTubeなどに掲載しても問題ないのでしょうか。
最初に試合そのものは著作物でない、と説明しましたが、著作物でないなら、自分で撮影すれば、その映像は撮影した自分の著作物になるはず。
ところが、これも「ちょっと待った」がかかる場合があります。
大抵、スポーツビジネスには、放送権料がかかってくるので、勝手に誰かがYouTubeやニコ動などで試合を放送してもらっては困る、という話になります。
そのため、スポーツごとに、競技場のルールなどの運営管理規定で、営利目的で競技、式典、観客等の写真撮影またはビデオ撮影すること(例 : Jリーグ)」が禁止されている場合があります。
ただし、「放送権」自体は、法律で規定されているものではありません。
放送事業者の放送したスポーツ中継映像を再放送等するのではなく,観客が自ら撮影したスポーツの試合の映像を放送またはネット配信することは,自由にできるのであろうか。
我が国においては,スポーツの試合の映像を放送またはネット配信すること自体に関する権利,すなわち「放送権」という権利は,成文法で直接保護されているわけではない。
しかし、ビジネス上、重要な位置を占めるため、「競技場の施設管理権」や「選手の肖像権」などを根拠に「放送権」の財産的価値が保護されています。
営利目的でなく、特に主催団体などにビジネス上の不利益を与えるものでないかぎり、SNSに挙げることは基本的に問題ないとは思いますが、一応、各競技団体の規定をチェックしてみるとよいかもしれません。
東京五輪でも、撮影やネットへのアップのルールに関し、厳しい取り決めがあり、「時代に逆行している」や「黙認されるのでは」といった声もありました。
この辺りのルールも、今後時代に合わせてもう少し柔軟になっていくかもしれません。
以下は、初心者でも分かりやすい、著作権に関するおすすめの書籍です。
デザイナーや写真家、ブロガーなど、フリーランスを始めるのによいでしょう。