キャラクターの名前やタイトルと著作権
著作権とは、法律で定められたもので、著作物を保護するための権利のことです。
著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの。
ブログの文章からインスタグラムの写真まで、ネット社会では多くの表現作品が著作物に該当しますが、例外の一つとして、「短すぎるもの」に著作権は発生しません。
著作権が発生するためには、ある程度の長さが必要です(ただし、俳句などは作品に該当するため、著作権が認められる最低文字数が、法律で決まっているわけではありません)。
それでは、たとえばキャラクターの名前や芸名、ドラマやゲームのタイトルなどに著作権は発生するのでしょうか。
以下、キャラクター名やタイトルの著作権について解説したいと思います。
①キャラクターの名前に著作権はない〜ドラクエⅤの訴えはなぜ起きた?〜
結論から言うと、キャラクターの名前に著作権はありません。
理由は、先ほども触れたように、短すぎるから、ということが挙げられます。
ゲームや漫画、ドラマの主人公と同じ名前を使っても、基本的に著作権侵害ではなく、違法ではありません。
珍しいキャラクター名であっても、基本的に著作権は発生しないので、自由に使っても著作権法上は問題ありません。
最近では、ドラクエⅤの映画『ドラゴンクエスト ユアストーリー』の主人公の名前「リュカ・エル・ケル・グランバニア」は、小説の「リュカ(リュケイロム・エル・ケル・グランバニア)」という名前のパクリではないか、として作者が訴えを起こした事例があります。
通常、ゲーム版のドラクエは、主人公の名前をそれぞれプレイヤーが決めます。
そのため、小説版ドラクエⅤの主人公の名前を決めたのは、この作品の作者である久美沙織さんです。
映画の内容は小説版と違ったとしても、我が子と言っても過言ではない存在として生み出したキャラクターの名前を無断で使用されたことに対し、謝罪と、「提供 久美沙織」というクレジット表記を求める、というのが訴えの中身です。
公開された声明を読むと、確かに久美沙織さんのクリエイターとしての想いは伝わってきます。
声明全文は、以下に掲載されています。
一方で、この声明文でも触れられていますが、残念ながら著作権の法律上、キャラクターの名前に著作権は発生せず、無断で自由に使うこと自体が許される、ということになります。
この辺りは、マナーや、クリエイターへの敬意として、あらかじめ発案者に告げるか、名前を変えることがあってもよかったのかもしれません。
弁護士の見解は、以下の通りになります。
川野弁護士は、「やや長めの特徴的な名前なので、著作物と認められる可能性がゼロとは言えませんが、やはり印象としては厳しいのではないかなと思います」と分析する。「リュカ」よりは可能性があるものの、裁判所が“著作物”と認める判決を出す可能性は低いという。
(中略)
「『著作物か否かの判断が難しい』部分の二次的使用の有無をチェックするのは確かに困難ですが、そもそも著作権が生じない部分については、スクエニに限らず、本来、誰でも自由に使用できますので、久美氏とスクエニとの契約内容の詳細は不明ですが、特段の合意がないのであれば、著作物ではないと判断した部分の使用に際して、事前の報告や同意まで求めることはできないのではないかと思います」
もう一点、著作権が発生しなかったとしても、そのキャラクター名が「商標登録」されている場合には注意が必要です。
ビジュアルがなく、キャラクター名だけであれば著作権侵害には該当しません。
商標登録されていると、商標権侵害となることがありますので、これについても確認された方がいいでしょう。
キャラクター名だけなら真似しても著作権侵害になりませんが、商標登録されている場合は問題が生じる可能性もあるので、J-PlatPatで確認してみましょう。
加えて、少し話は逸れますが、芸名やペンネームも著作権は発生しません。
よくものまねタレントでそっくりさんが似たような芸名で活動している(長州小力など)こともありますが、著作権的には違法ではありません。
芸名も、ある意味では「キャラクター名」で、同じように著作権はなく、誰かと同様ないしは類似の芸名やペンネームを使っても著作権的には問題はありません。
一方で、そのひと本人だと消費者に混同させることは、不正競争防止法などに触れる可能性があります。
不正競争防止法では、他人の商品等表示で、需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用したり、使用した商品等を譲渡したりすることを「不正競争」であるとしています(不正競争防止法2条1項2号)。
また、キャラクター名と同様に、芸名も「商標登録」がされている場合があります。
たとえば、女優の蒼井優さんは芸名ですが、その商標は所属事務所が登録しています。
一方で、「能年玲奈」さんは(そもそも本名ですが)商標登録はされていません。しかし、独立に際し、使用を禁じられ、「のん」として活動しています。
これは商標権の問題ではなく、事務所との契約上の問題が原因のようです(参照 : 本名・能年玲奈、今後は使用すると違法行為該当で損害賠償支払いの可能性も?)。
②タイトルに著作権はない〜ただ商標権に注意〜
ゲームや漫画、アニメ、小説、映画などのタイトルや曲名も、著作権は発生しない、というのが通例です。
これも、キャラクターの名前と同様、短すぎる、というのが理由として挙げられます。
手塚治虫さんの漫画『ブラックジャック』と似たタイトルの漫画で、『ブラックジャックによろしく』という佐藤秀峰さんの作品がありますが、タイトルに著作権はないので著作権侵害にもなりません。
ただ、キャラクター名と同様、「商標権」については、すでにその著作権者や版元、映画会社などが商標登録している場合があるので注意が必要です。
また、すでにある作品と混同させるような方法で、タイトルを真似たり、丸パクリすれば、不正競争防止法に違反する可能性はあります。
いずれにせよ、キャラクター名もタイトルも「長さ」というのが著作権に関する重要なポイントとなります。
著作物と認められ、著作権が発生するための「長さ」には、特に条件はありません。
俳句などは著作物に含まれますが、「17文字以上」と法律で決まっているわけではありません。
短いものまで細かく著作権を認めると、そのぶん日常的な表現が規制され、本来の趣旨である文化の発展をむしろ損なうことになる、ということも危惧されるからでしょう。
以上、キャラクターの名前や作品のタイトルの著作権に関する解説でした。
以下は、初心者でも分かりやすい、著作権に関するおすすめの書籍です。
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