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知的財産権

都市伝説と著作権

都市伝説と著作権

テレビ番組やYouTubeなどで人気のジャンルの一つに、都市伝説があります。

都市伝説とは、まことしやかに囁かれる噂のようなもので、一つのフィクション、物語としても享受されています。

この都市伝説に関して、一つのツイートをきっかけに、著作権と絡めた、ある騒動が勃発し、話題となります。

そのツイートというのが、オリラジのあっちゃんが、以前テレビ番組の『やりすぎ都市伝説』で披露した都市伝説が、パクリだ、という指摘です。

細かい都市伝説の内容は、リンクに解説があるので、そちらを参考にしてもらうとして、そもそもの話として、「都市伝説」に著作権はあるのでしょうか。

今回指摘をしている吉田さん曰く、『やりすぎ都市伝説』で2014年夏に公表された話の元ネタと思われる記事を、すでに半年ほど前に自身で発表していたようです。

それが、「【新・東京悪所】徳川家が呪い潰すオリンピック!? 新国立競技場が…」です。

確かに、流れはおおむね一緒です。

これが著作権侵害に当たるかどうかの話の前に、まず、著作権が発生する著作物の法律上の定義を紹介したいと思います。

思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの(著作権法第2条第1項第1号)

ざっくり言えば、商用・非商用問わず、「思想や感情を創作的に表現したもの」というのが著作物であり、著作権によって保護されるという形になっています。

都市伝説の類に著作権が発生するかという点について、これまで僕が読んだ本のなかでは見たことがありませんし、ネットで検索しても弁護士などの見解はありません。

そのため、以下は解説というより、自分の思考の整理も含めた、個人的な見解になります。

「噂によると ──」

今回、仮に「パクリ」だとしたら、パクった当事者は、オリラジのあっちゃんというより、おそらく台本を書いている番組スタッフの方でしょう(完全にあっちゃん持ち込みの場合は違うかもしれません)。

加えて、問題を複雑にしているのは、これが「都市伝説」を紹介する番組ということです。

基本的に、都市伝説に、「著作権はない」と僕は思います。

都市伝説の意味を調べると、「口承される噂話のうち、現代発祥のもので、根拠が曖昧・不明であるもの」とあります。

明確な著作者がいない、あくまで噂話(噂が噂を読んで、気づいたらその形になっている集合的な話)です。

この都市伝説を、自分が発想したオリジナルの話だと主張すれば、また法律以外の問題(不満の声など)も発生するでしょうが、あくまで番組のタイトルは『やりすぎ都市伝説』です。

今から話すことは都市伝説ですよ、ということが前提にあるので、これは言ってみれば「噂によると ── 」というのが、話の冒頭についているようなものでしょう。

決してオリジナルを主張しているわけではない、というのは大きなポイントだと思います。

オリジナル「トンデモ説」

ただ、さらに問題をややこしくしているのが、吉田さんのほうは、「都市伝説=噂」を紹介しているのではなく、「トンデモ説=オリジナル」と主張している点にあります。

たとえば、まことしやかに言われている単なる噂を最初におおっぴらに広げたからと言って著作権は発生しませんし、著作者でもありません。

最初に噂を紹介した人と、次に噂を紹介した人、という違いにすぎません。

一方、「トンデモ説」となれば、それはオリジナルの「説」であり、たとえトンデモであったとしても、一つの仮説を提示した論文のようなものと言えるのではないでしょうか。

片一方は、トンデモ説として提示し、片一方は、都市伝説として紹介している。

仮に、番組スタッフ(ないしはあっちゃん)が、この元ネタを知らず、ネット上などで噂になっていた(都市伝説化していた)話を、「都市伝説」として紹介したら、つまり、「こんな“噂”があるんですよ」という形で紹介したら、それは著作権の侵害にはならないような気がします。

もう一つ、抑えておく点として、学説やアイデアは著作権の対象外、という基本的な原則もあります。

ちょっと長いですが、東京弁護士会の知的財産権法部の連載企画を紹介したいと思います。

著作権法自体,「思想又は感情を創作的に表現したもの」が著作物であると定義しておりますので,表現の基礎にある思想,感情,あるいはアイデアというようなものを保護するわけではございません。著作権の保護対象が表現であり,アイデアは保護されないというルールは,著作権制度の国際的かつ基本的な原則です。

このように,表現でないものは保護の対象とはならないわけですので,表現の基礎にある思想,感情,アイデアというようなものは保護対象にはならないわけで,学説やアイデアというようなものがどれほど独創的なものであっても,そのアイデア自体は,著作権法上は保護の対象外ということになります。

なぜ,思想・表現二分論というものが成り立つのか という理論的な根拠についてでございます。一つには,表現の自由や学問の自由等の近代社会が有している基本的な価値を守るという点にございます。

それから,二つめですけれども,思想をだれでも利用可能な パブリック・ドメインとして留めておくということが,情報の豊富化に役立ち,文化の発展という著作権 法の目的に合致するということが挙げられます。

三つめですけれども,裁判という場において,人の思想の同一性など,類似性を判断することが困難で,そのようなことはあまり妥当ではないというようなことも, アイデアと表現の二分論の理論的な根拠として挙げられているところでございます。

アイデアと表現は,著作権法の保護を受けるか受けないかということで,そこは,もし境界がはっきり分かれれば,何が保護されて,何が保護されないかということをはっきりできるわけです。

けれども,アイデアか表現かということは規範的な要素が強いものですから,その境界を分けるということは,必ずしも明確にできることではありません。

そのような意味で,今までの判例の中でも,一般的な基準は定立されておりませんし,学説でも,何が表現で何がアイデアかということを,きちんと画一的に基準を立てていうものは,あまり見当たらないように思います。

出典 : 著作権法の守備範囲

都市伝説は、先ほども触れたように「噂」なので別にしても、トンデモ説というのは(提唱者がはっきりしている場合)著作権で守られるのか、という点を考える際、そもそもこれらは「学説」なのか「文学」なのか、ということも挙げられると思います。

学説なら、著作権では守られません(論文そのものは表現物として守られるので、論文の文章自体を「引用」の条件に合致したり許可のある場合を除いて無断転載してはいけません)。

一方が「都市伝説」として公表している点(オリジナルを主張しているのではなく、巷に出回っている都市伝説=噂として紹介している)に加え、これが「学説」であると考えると、著作権侵害に該当はしないのでしょうか。

ただ、もし仮に「文学」だと考えると、またちょっと複雑になるかもしれません。でも、形の上では、「学説」のほうが近いのではないかと思います。

もちろん、こうした問題は法律上だけでなく、心理的な側面も大きいのでその辺りも含めると一概に何が正しいのかは、いっそう難しくなるでしょう。

しかし、基本的に、「都市伝説(その他、怪談や民話、言い伝えなど)」には、著作権はない、と考えられています。

以下は、初心者でも分かりやすい、著作権に関するおすすめの書籍です。

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