有料記事やメルマガと著作権
企業や個人が、メールを通じ、会員限定で配信する「メールマガジン」、通称「メルマガ」と呼ばれるサービスがあります。
一時期、主流だったメルマガも、拡散性の高いSNSの浸透によって、いったんは目立たない存在になります。しかし、近年は、炎上の問題もあり、もっと閉鎖的な空間が担保されるメルマガも、再び注目を集めています。
メルマガには、有料メルマガもあれば、無料メルマガもあります。
SNSのような公開の場で発信するのではなく、もう少し限られた人々を対象に、無料でメルマガを配信している企業や個人事業主の方もいるでしょう。
また、芸能人やミュージシャンが、有料ファンクラブ会員限定でメルマガを配信している場合もあります。
このメルマガの内容を、たとえば、ブログの記事などに無断転載することは、著作権侵害に当たるのでしょうか。
また、メルマガの「引用」は可能なのでしょうか。
結論から言えば、メルマガの「無断転載」に関しては、著作権侵害に当たる、違法行為です。
ただし、一部例外もあるので、以下、詳しく解説したいと思います。
メルマガは著作物か
まず、そもそもメルマガは、「著作物」なのでしょうか。
著作物の定義は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と幅広く広くカバーされています。
ブログの記事や、インスタの写真はもちろん、ツイッターも、一般的な日常のつぶやき(「ご飯を食べた」「おはよう」)以外は、概ね「著作物」になります。
その他、このメルマガも、立派な「著作物」なので、無断転載すれば、著作権法違反に当たります。
一方、「著作物」を合法的に無断で自身のブログなどに転載してもよい方法が、条件付きではありますが、存在します。
それが、「引用」です。
著作物は、「引用」の条件に合致すれば、文章の一部を引用して自分のブログやメルマガなどに記載が可能となります。
メルマガは「引用」可能
メルマガは、「著作物」であり、そのまま全文を無断で転載することはできませんが、「引用」であれば、可能です(引用は、著作権者への許可取りの必要もありません)。
引用の条件のうち、ポイントは、「公表された著作物である」という点です。
公表された著作物ということは、メールや手紙、LINEなどの私信は、著作物ではあったとしても、「公表された著作物」ではないので「引用」はできません(秘密のラブレターの一節を、勝手にブログやSNSで出典を明記され「引用」されたらたまったものではないでしょう)。
逆に、メルマガの場合は、個人間の私信ではなく公表された著作物と捉えられ、「引用」の条件を満たせば、引用も可能です。
これは無料メルマガであっても、有料メルマガであっても同様です。
では、多数の人間に送っているダイレクトメールやメールマガジンはどうでしょうか。
限定的ではありますが、不特定多数の読者に向けて発信(公開)していると考えられるので、手紙やメールと異なり公表された著作物にあたり、引用の条件をみたしていれば著作権者の許可がなくても使用できます。
メールマガジンは無料のものもあれば、月額課金制など有料のものもあります。昨今、noteなどインターネット上でコンテンツ販売を行えるサービスもあります。有料コンテンツの場合でも引用のルールに沿っていれば文章を引用することが可能です。
出典 : 大串 肇 他『クリエイターのための権利の本』
有料のコンテンツ、たとえば、有料メールマガジンやnote、また新聞で有料登録しなければ読めない記事であっても、引用は可能です。
また、仮にメルマガの末尾に「無断転載禁止」とあっても、「引用」の場合は法律上許されます。
紙の新聞や書籍も、有料で購入者のみが基本的には中身を読むことができますが、それでも引用が許されます。
紙媒体の中身が引用できるように、新聞サイトの有料会員限定記事でも引用が可能であり、またメルマガも、「引用」は合法である、ということになります。
ただし、マナーや信頼関係といった問題はあり、わざわざ閉鎖的にしたいと著者や企業が思っているのに、引用され、ネットという表の世界にひきずりだされることを嫌がる人もいるでしょう。
著者によっては、メルマガであっても引用されることを喜ぶ人もいるでしょうが、この感じ方というのは著者によって違います。
健全な議論の場を構築するためにも引用は許されるべきことで、公表した以上、たとえメルマガや地域のフリーペーパーでも、引用し、論じられることを避けることはできません。
しかし、これはあくまで法律の論理で、人間関係やモラル、マナーといった点を考えると、内容や関係性によっては、使用許可を求めたほうがよい場合もあるかもしれません。
以上、有料記事やメルマガと著作権でした。
以下は、初心者でも分かりやすい、著作権に関するおすすめの書籍です。
デザイナーや写真家、ブロガーなど、フリーランスを始めるのによいでしょう。