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料理の写真やレシピと著作権
料理と著作権
レストランやカフェで提供される料理の写真を撮影し、インスタグラムやツイッターなどSNSやブログなどにアップしたい、という場合があると思います。
このお店の料理がどれだけ美味しかったか、ということを表現するのに写真は不可欠でしょう。
さて、そこで気になるのが、「著作権」です。
料理を作品(著作物)と考えるなら、勝手に写真を撮影することは著作権侵害にはならないのでしょうか。
実は、現在のところ、「料理に著作権はない」というのが一般的な解釈のようです。
著作権があるかないかといえば、ありません。民法上も著作権の事例に挙げられておりませんし、芸術性はないという認識が一般的です。食べればなくなってしまいますからね(弁護士)。
盛り付けなどの見た目や、香り、後述する味なども、著作権は認められません。
料理の盛り付けに関しては、相当独創的な見た目であれば、著作権が生じそうな気もしますが、もし発生したら、作者の死後70年は同じ盛り付けができない、といったことになるので、盛り付けに著作権を認めるというのは、理論上はあり得ても、だいぶハードルが高いと考えられます。
著作権が発生しないということは、基本的に写真や動画で撮影しても、インスタやツイッター、ブログなどにアップしても、特に問題はない、ということになります。
一方で、「料理」に著作権はありませんが、「料理の写真」には著作権が発生します。料理を撮った写真や動画というのは、一つの著作物であり、他人の「料理の写真」を無断転載した場合は、著作権侵害に当たります。
また、撮影の際には、以下のようなポイントに注意しましょう。
お店が撮影禁止かどうか
著作権的には問題がなかったとしても、お店の側が店内のルールとして撮影禁止を掲げている場合は、そのルールに従いましょう。
店内での撮影が禁止されていなかったり、撮影を認識しながら何も注意を受けなかった場合は黙示の承諾があると解されますので、問題になることは少ないでしょう(弁護士)。
心配な場合は、念のため、店側に写真撮影が可能かどうか、またブログやYouTubeで紹介していいかどうか、確認するとよいでしょう。
周りのお客さんの迷惑にならないように
写真撮影の音がパシャパシャと鳴れば、周りのお客さんに迷惑がかかります。
また、店内を撮影する際に、お客さんや店員さんの顔がはっきり写った写真を勝手にネット上にアップすれば、肖像権の侵害に繋がる可能性もあるので、その点は注意が必要です。
悪口に使用しない
ブログで料理の悪評を書いたり、SNSで店の悪口を載せる目的で写真を使用した場合、「業務妨害罪」に問われることもあるようです。
ただし、合理的な理由がある批評は、自由経済では是認されるべきことなので、その場合、悪意などの悪質性が問われることでしょう。
例えば、合理的な根拠なく星1つの評価を繰り返し付けるといったものは『業務妨害』に当たる可能性があります。また、星のみではなく具体的な事実関係を示して事業者の社会的評価を低下させた場合は『名誉棄損』に該当する可能性があります。
(中略)
しかしながら、社会において経済活動をしている以上、一定の評価を受けることは避けられません。また、評価されない自由を認めると、評価する側の表現の自由を制限してしまうのではないかという問題が生じます。したがって、『公に評価されたくない』という事業者の希望は、かなわないものと思われます。
ブログの運営、インスタやツイッターなどSNSにカフェやレストランの写真をアップするときは、「全世界の人が見られる状態にある」ということを意識しましょう。
レシピと著作権
画像 : Unsplash
また、家庭で料理をする際に、「レシピ」を参考にすることも多いのではないでしょうか。
どんな素材を使うのか、どれくらいの分量を、どういった手順で調理するのか、といったことが細かく書かれたレシピは、料理にとって重要な設計図です。
場合によっては、「秘伝のレシピ」のように秘密性の高いレシピもあるでしょう。
しかし、ネットの普及もあって、料理人が教えるレシピが無断転載されることも多発しているようです。
料理の材料や調理方法を書いたレシピが、インターネットのブログなどに無断で転載されるケースが増えていることで、料理研究家らが困惑している。
テレビや雑誌などに取り上げられたり、料理教室などでお金をとって生徒に教えたりしたレシピが許可なく公開され、誰でも見ることができるようになることで、「自分のアイデアなのに…」「(お金をとっている)他の生徒に申し訳ない」との思いを募らせている人たちが相次いでいる。
それでは、こうしたレシピに、「著作権」は存在するのでしょうか。
結論から言うと、料理のレシピに著作権はない、ということになります。
著作権法で守られる著作物の定義は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」です。
レシピは、あくまでも「情報」であって、思想や感情を創作的に表現した「著作物」ではありません(ただ、レシピに、ありふれた表現ではなく、独創性の高い表現が使われているようなら、著作物に当たる可能性はあります)。
また、著作権の考え方では、「アイデア」の段階で保護されるということもありません。
そのため、YouTubeの動画で、他人のレシピを参考に作った料理や、またレシピ自体を紹介しても基本的に問題ありません。
どうしても料理のレシピを守りたい場合は、「発明」ということで特許出願するか、創作料理のメニューを商標登録する、といった方法もあるようです。
料理のレシピを「発明」として特許庁に登録している場合には、勝手にこれを使うと特許権侵害となる可能性がある。実際、あるレストランでは、ソースのつくり方を特許登録している。さらに、創作料理のメニューなどを商標登録している場合は、これを勝手に使うと商標権侵害とされるかもしれない。
ただ、レシピの権利はグレーなので、必ずしも守られるというわけではありません。
一方で、レシピに著作権はないものの、料理のレシピ本や写真などは、著作物として保護されるので、たとえば、YouTubeの動画やインスタなどで、レシピ本の内容をそのまま映す、といったことは、著作権侵害に当たる場合があります。
反対に、料理の「動画」自体は著作物なので、料理YouTuberさんの動画を勝手に転載すると、著作権侵害になります。
また、先ほど「秘伝のレシピ」と言いましたが、こちらも、企業秘密であるものを不正に持ち出して公にされた場合、ハードルは高いものの、不正競争防止法違反に該当する可能性もあります。
ラーメンのレシピ、例えばスープの作り方(使用する材料の種類や量、調理の手順)については、著作物に当たらず、著作権による保護の対象とはならないでしょう。
しかし、ラーメン店の営業秘密として保護される可能性はあります。
不正競争防止法では、営業秘密を、その保有者の許可なく使ったり開示したりする行為等に対し、その保有者による差止請求権及び損害賠償請求権を認めています。
料理の味に著作権はあるか
料理のなかには、一風変わった独特の「味」もあります。
この味には、果たして著作権があるのかどうか、欧州司法裁判所で争われたことがあります。
裁判で争われたのは、オランダ企業が売り出したクリームチーズとハーブを混ぜた「チーズ」。
この企業が発売を始めたあとに、別の企業が、このチーズの味を真似たチーズを発売し、著作権侵害ということで裁判に発展します。
欧州司法裁判所の判決は、「味に著作権はない」という結論だったようです。
保護の対象となる著作物には、以下の二つの条件が必要とされています。
①オリジナルな知的生産物である
②十分正確かつ客観的に識別が可能な創造による表現である
このうち、②の「客観的に識別が可能」が、「味」には当てはまらない、という理由から、「味に著作権はない」という判断が下されたようです(参照 : 財経新聞)。
味はあくまで主観的で、現代の科学では、客観的に「味」の差異(類似性)を見分ける術がない、ということです。
以上、料理の写真やレシピと著作権でした。
以下は、初心者でも分かりやすい、著作権に関するおすすめの書籍です。
デザイナーや写真家、ブロガーなど、フリーランスを始めるのによいでしょう。