踊ってみた動画と著作権
YouTubeなどの動画配信サービスには、「弾いてみた」「演奏してみた」など、有名楽曲を一般の人が演奏した動画や、「歌ってみた」という自分で歌っている動画も多く挙がっています。
たとえ、その動画によってお金を稼いでいなかったとしても、既存の楽曲をコピーして配信すれば、本来は、「著作権」的に違法になります。
しかし、YouTubeやニコニコ動画、TikTokなど、JASRACと包括契約しているサイトでは、演奏したり自分で歌う動画を配信しても、違法ではありません(ただし、音源に関しては、著作権者が許可していないCD音源などの使用はできません)。
一方、アイドルやドラマなどで話題になった「ダンス」を踊り、その動画をアップする、「踊ってみた」シリーズに関する著作権は、どうなっているのでしょうか。
ダンスや振り付けにも、「著作権」は発生するのでしょうか。
結論から言うと、ダンスや振り付けにも著作権は発生するので、他人が作ったダンスに関する「踊ってみた」は、厳密には著作権侵害です。
著作権の定義は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とあり、著作権法の「著作物」の具体例にも「舞踊」が挙げられています。
しかし、あらゆる振り付けに著作権が発生するようなら、場合によっては、日常生活にも支障をきたします。
著作権が発生するのは、あくまで「独創的」な振り付けに限ります。
独創的な振り付けのラインは難しいですが、アイドルが踊るダンスなども、しっかりと振り付け師が創作し、アイドルが表現する、れっきとした著作物です。
許可なくYouTubeやツイッター、インスタ、Tiktokなどを通し、「踊ってみた」という形で、ダンス動画を配信するのは、著作権の点から言えば、違法に当たります。
音楽や歌詞と違い、「振り付け」は、JASRACが管理しているわけでもないので、「包括契約」も関係ありません。
著作権が発生するようなダンスを、商用利用や、SNSでの公開など、“私的使用”を越えて行う場合は、著作権者の許可を得る必要があるでしょう。
とは言え、ダンスの振り付けに関して、裁判によって著作権が争われたケースは稀のようです。
また、皆がダンスを真似て配信することで、そのダンス自体が浸透したり、盛り上がったりする、というメリットもあることから、一定程度は黙認されていることも多い(著作権侵害は、基本的に、著作権者のみが侵害を訴えられる)というのが現状です。
もう一つ、注意点として、仮に「踊ってみた」でダンス動画を配信する際、CD音源を流すことがあるかもしれません。
このCD音源も、著作権侵害となるので、この点が理由で動画が削除される場合もあるかもしれません。
あまり何もかも厳密に著作権侵害にすることで、誰も踊ってくれなくなれば、そのダンス自体が浸透しません。
だからと言って、CD音源までフルで流されれば、音源を購入したりダウンロードする人も減ってしまうので、この辺りは「文化の発展」を踏まえると非常に複雑な問題ではあります。
著作権に詳しい福井弁護士は、このダンス動画の配信と著作権の問題について、次のように語っています。
はっきり許可がないケースには一切手を出さないのは安全な選択肢だ。ただ、現実には「黙認」や「見て見ぬふり」で動画投稿が花開いているのも事実。
リスクは承知しつつ行うとしても、相手に迷惑や損失が及んだり、失礼に当たったりしていないか、の想像力は重要だ。逆に権利者側も、包括契約のようなユーザーの盛り上がりを支える仕組みの整備は進めるべきだろう。
過去には、星野源さんが歌う、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)』のテーマ曲『恋』のように、企業側が期間や条件を決めた上で、「踊ってみた」の動画投稿を許可したケースもあります。
以上、「踊ってみた」と著作権でした。
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