み吉野の山の秋風さ夜更けて ふるさと寒く衣うつなり
現代語訳
吉野の山に秋風が吹き、夜が更けていく。かつての都は寒々として、衣を打つ砧の音が聞こえてくる。
語釈
- み吉野
- 吉野。「み」は美しさをたたえる接頭語。
- さ夜更けて
- 夜が更けて。
- ふるさと
- かつて都や離宮のあった土地。今は寂れている場所をいう。
- 衣うつ
- 砧で布を打つ。冬支度の音。
背景と読みどころ
秋風、夜更け、寒さ、砧の音。冷えていくものだけを重ねている。
「ふるさと」は生まれ故郷のことではなく、かつて栄えて今は寂れた土地を指す。だからこの寒さは、気温だけの話ではない。
『新古今和歌集』の秋の部に載る。
作者
参議雅経(一一七〇〜一二二一)。飛鳥井雅経。『新古今和歌集』の撰者の一人。蹴鞠にも優れ、飛鳥井家の祖となった。