きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに 衣かたしきひとりかも寝む
現代語訳
こおろぎの鳴く霜の夜、冷たいむしろの上に自分の衣だけを敷いて、私はひとりで寝るのだろうか。
語釈
- きりぎりす
- 今のこおろぎ。
- さむしろ
- 狭いむしろを意味する「小筵」と、「寒し」を掛けている。
- かたしき
- 自分の衣だけを敷く。二人なら互いの衣を敷き交わす。
- かも寝む
- 寝るのだろうか。
背景と読みどころ
「かたしき」の一語で独り寝が示される。二人であれば、衣を敷き交わすものだったからである。
三番の人麻呂の歌の結び「ひとりかも寝む」をそのまま受けている。古い歌の言葉を借りて、自分の夜に重ねている。
『新古今和歌集』の秋の部に載る。
作者
後京極摂政前太政大臣(一一六九〜一二〇六)。九条良経。摂政・太政大臣を務め、『新古今和歌集』の仮名序を書いた。