花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに
現代語訳
桜の色はもう褪せてしまった。長雨がふるあいだ、私もむなしく物思いにふけって年をとった。
語釈
- うつりにけりな
- 色あせてしまったなあ。
- いたづらに
- むなしく。何の甲斐もなく。
- ふる
- 時が「経る」と、雨が「降る」を重ねている。
- ながめ
- 物思いにふける「眺め」と、「長雨」を重ねている。
背景と読みどころ
桜の色が褪せた、という話をしながら、同時に自分の容色が衰えたことを言っている。
下の句は言葉が二重になっていて、「長雨が降っているあいだに」と「私が年を経ているあいだに」が同時に読める。
仕掛けとしてはかなり込み入っているのに、読み終えたときに残るのは素直な寂しさだけである。
作者
小野小町。九世紀の歌人で、六歌仙の一人に数えられる。生まれた年も没した年も分かっておらず、経歴もほとんど伝わっていない。絶世の美女という像は、後の世に作られていったものと見られている。