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花の色はうつりにけりないたづらに わがにふるながめせしまに

小野小町おののこまち  009

現代語訳

桜の色はもう褪せてしまった。長雨がふるあいだ、私もむなしく物思いにふけって年をとった。

語釈

うつりにけりな
色あせてしまったなあ。
いたづらに
むなしく。何の甲斐もなく。
ふる
時が「経る」と、雨が「降る」を重ねている。
ながめ
物思いにふける「眺め」と、「長雨」を重ねている。

背景と読みどころ

桜の色が褪せた、という話をしながら、同時に自分の容色が衰えたことを言っている。

下の句は言葉が二重になっていて、「長雨が降っているあいだに」と「私が年を経ているあいだに」が同時に読める。

仕掛けとしてはかなり込み入っているのに、読み終えたときに残るのは素直な寂しさだけである。

作者

小野小町。九世紀の歌人で、六歌仙の一人に数えられる。生まれた年も没した年も分かっておらず、経歴もほとんど伝わっていない。絶世の美女という像は、後の世に作られていったものと見られている。