これやこの行くも帰るも別れては 知るも知らぬも逢坂の関
現代語訳
これがあの、行く人も帰る人もここで別れ、知る人も知らぬ人もここで出会うという、逢坂の関なのだ。
語釈
- これやこの
- これがまあ、あの。噂に聞いていたものを目にしたときの言い方。
- 知るも知らぬも
- 顔見知りの人も、見知らぬ人も。
- 逢坂の関
- 山城と近江の境にあった関所。「逢ふ」を掛ける。
背景と読みどころ
「行く」と「帰る」、「知る」と「知らぬ」。反対の言葉を重ねていくだけで、関所を行き交う人の流れが見えてくる。
別れる場所であると同時に、逢う場所でもある。「逢坂」という地名そのものが、この歌を成り立たせている。
『後撰和歌集』に収められている。
作者
蝉丸。生没年も伝記も分かっていない。逢坂の関のあたりに住み、琵琶を弾いたと伝えられるが、その話の多くは後の世に作られたものである。