わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと 人には告げよ海人の釣舟
現代語訳
大海原を、数えきれない島々をめざして漕ぎ出していったと、都の人に伝えてくれ。漁師の釣舟よ。
語釈
- わたの原
- 広い海。「わた」は海を指す古い言い方。
- 八十島
- 数えきれないほど多くの島。
- かけて
- めざして。
- 海人の釣舟
- 漁師の釣舟。
背景と読みどころ
隠岐へ流されるときに詠まれた歌と伝えられる。
呼びかけている相手は目の前の釣舟だが、伝えてほしい相手は都にいる。舟に託すよりほかにない、というその状況が、そのまま歌になっている。
篁は遣唐使の船に乗ることを拒んで嵯峨上皇の怒りを買い、隠岐へ流された。二年ののちに赦されて都に戻っている。
『古今和歌集』の旅の部に載る。
作者
参議篁(八〇二〜八五二)。小野篁。漢詩文に優れ、権力に屈しない逸話が多く伝えられる。