玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば 忍ぶることの弱りもぞする
現代語訳
わが命よ、絶えるなら絶えてしまえ。生きながらえていては、この恋を隠しとおす力が弱ってしまうといけないから。
語釈
- 玉の緒
- 玉を貫き通す紐。転じて命のこと。
- 絶えなば絶えね
- 絶えるなら絶えてしまえ。
- ながらへば
- 生きながらえていると。
- 忍ぶる
- 人目を忍んで隠す。
- もぞする
- 「〜したら困る」という危惧を表す。
背景と読みどころ
命よ絶えてしまえ、という激しい言い方で始まるが、望んでいるのは死ではない。隠しとおす力のほうが弱ることを恐れている。
誰にも知られないままでいたい、というその一点だけで張りつめている歌である。
『新古今和歌集』には「忍ぶる恋」という題で詠まれた歌として載る。与えられた題に沿って作られたものであり、実際の恋の告白とは限らない。
作者
式子内親王(生年不明〜一二〇一)。後白河天皇の皇女。賀茂の斎院を長く務め、のちに出家した。藤原俊成に和歌を学んだとされる。