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村雨むらさめつゆもまだ真木まき きりちのぼる秋の夕暮ゆふぐれ

寂蓮法師じゃくれんほうし  087

現代語訳

にわか雨のしずくもまだ乾かない杉や檜の葉に、霧が立ちのぼっていく秋の夕暮れ。

語釈

村雨
ひとしきり降ってはやむ雨。
干ぬ
乾かない。
真木
杉や檜など、質のよい木。
秋に立つもの。春は霞という。

背景と読みどころ

雨がやんだ直後、まだ濡れている葉から霧が立ちのぼる。ごく短い時間の区切りを、そのまま切り取っている。

人が出てこない。濡れた葉と、立つ霧と、夕暮れだけで一首ができている。

『新古今和歌集』の秋の部に載る。「秋の夕暮」で結ぶ歌は当時さかんに詠まれ、この作者の別の一首は「三夕の歌」の一つに数えられている。

作者

寂蓮法師(生年不明〜一二〇二)。俗名は藤原定長。俊成の甥で、その養子となったが、のちに出家した。『新古今和歌集』の撰者に選ばれたが、完成を見ずに亡くなった。