村雨の露もまだ干ぬ真木の葉に 霧立ちのぼる秋の夕暮
現代語訳
にわか雨のしずくもまだ乾かない杉や檜の葉に、霧が立ちのぼっていく秋の夕暮れ。
語釈
- 村雨
- ひとしきり降ってはやむ雨。
- 干ぬ
- 乾かない。
- 真木
- 杉や檜など、質のよい木。
- 霧
- 秋に立つもの。春は霞という。
背景と読みどころ
雨がやんだ直後、まだ濡れている葉から霧が立ちのぼる。ごく短い時間の区切りを、そのまま切り取っている。
人が出てこない。濡れた葉と、立つ霧と、夕暮れだけで一首ができている。
『新古今和歌集』の秋の部に載る。「秋の夕暮」で結ぶ歌は当時さかんに詠まれ、この作者の別の一首は「三夕の歌」の一つに数えられている。
作者
寂蓮法師(生年不明〜一二〇二)。俗名は藤原定長。俊成の甥で、その養子となったが、のちに出家した。『新古今和歌集』の撰者に選ばれたが、完成を見ずに亡くなった。