夜もすがら物思ふころは明けやらで ねやのひまさへつれなかりけり
現代語訳
一晩中もの思いにふけるこのごろは、なかなか夜が明けず、寝室の隙間までもが素っ気なく見える。
語釈
- 夜もすがら
- 一晩中。
- 明けやらで
- なかなか明けきらないで。
- ねや
- 寝室。
- つれなし
- 素っ気ない。冷たい。
背景と読みどころ
待っても来ない夜が、いつまでも明けない。そのいらだちが、寝室の隙間にまで向かっている。
冷たいのは相手のはずなのに、そのつらさが戸の隙間にまで移っている。「さへ」の一語が、その八つ当たりの気分を伝える。
『千載和歌集』の恋の部に載る。
作者
俊恵法師(一一一三〜没年不明)。七十四番の源俊頼の子。自坊に歌人を集めて歌の会を開いた。鴨長明はその弟子にあたる。