ながらへばまたこのごろやしのばれむ 憂しと見し世ぞ今は恋しき
現代語訳
生きながらえたなら、つらい今このごろも懐かしく思い出すのだろうか。つらいと思っていた昔が、今では恋しいのだから。
語釈
- ながらへば
- 生きながらえたなら。
- しのばれむ
- 懐かしく思い出されるだろう。
- 憂しと見し世
- つらいと思っていた昔。
背景と読みどころ
昔つらかったことが、今は恋しい。ならば今つらいことも、いつか恋しくなるのだろう。時が経てば苦しみは薄れるという経験を、そのまま先の話に当てはめている。
慰めのようでいて、慰めきれていない。「や」という問いかけの形が、その頼りなさを残している。
『新古今和歌集』の雑の部に載る。
作者
藤原清輔(一一〇四〜一一七七)。七十九番の左京大夫顕輔の子。歌学に詳しく、書物を多く残した。