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世(よ)の中(なか)よ道(みち)こそなけれ思(おも)ひ入(い)る 山(やま)の奥(おく)にも鹿(しか)ぞ鳴(な)くなる

皇太后宮大夫俊成(こうたいごうぐうのだいぶしゅんぜい)  083

現代語訳

この世には逃れる道などない。思いつめて分け入った山の奥にも、鹿の鳴く声が聞こえてくる。

語釈

世の中よ
この世の中よ。
道こそなけれ
逃れる道はない。
思ひ入る
思いつめる。山に「入る」を掛けている。
なる
音や声から推し量る言い方。

背景と読みどころ

世を逃れて山に入っても、そこにも鹿の声が響く。どこへ行っても同じだと知る歌である。

「思ひ入る」の一語で、心の動きと山に分け入る動きが重なる。

『千載和歌集』の雑の部に、鹿を題として詠まれた歌として載る。

作者

皇太后宮大夫俊成(一一一四〜一二〇四)。藤原俊成。九十七番の定家の父で、『千載和歌集』を撰んだ。