思ひわびさても命はあるものを 憂きに堪へぬは涙なりけり
現代語訳
思い悩みながら、それでも命はこうして続いている。つらさに堪えきれないのは、涙のほうだった。
語釈
- 思ひわび
- 思い悩んで。
- さても
- それでも。
- 憂き
- つらさ。
- 堪へぬ
- 堪えられない。
背景と読みどころ
つらいと言いながら、命のほうは続いている。堪えきれずにこぼれるのは涙だけだ、という言い方である。
自分と涙を切り離して、涙のほうに堪え性がないことにしている。嘆きを一つずらした形になっている。
『千載和歌集』の恋の部に載る。
作者
道因法師。十二世紀の歌人。八十を過ぎても歌の会に通ったと伝えられる。生没年ははっきりしない。