わたの原漕ぎ出でて見ればひさかたの 雲居にまがふ沖つ白波
現代語訳
大海原へ漕ぎ出して見わたすと、はるかな沖の白波が、空の雲と見分けがつかない。
語釈
- わたの原
- 広い海。
- ひさかたの
- 「雲」「空」などにかかる枕詞。
- 雲居
- 雲のある所。空。
- まがふ
- 見分けがつかない。
背景と読みどころ
沖の白波が、空の雲と見分けられない。海と空の境が消えてしまう、広さだけの歌である。
十一番の篁の歌と同じく「わたの原」で始まるが、こちらには嘆きがない。眺めそのものを詠んでいる。
『詞花和歌集』の雑の部に載る。
作者
法性寺入道前関白太政大臣(一〇九七〜一一六四)。藤原忠通。摂政・関白を務め、書にも優れた。