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かりけるひと初瀬はつせやまおろしよ はげしかれとはいのらぬものを

源俊頼朝臣みなもとのとしよりあそん  074

現代語訳

つれないあの人が振り向くようにと初瀬の観音に祈った。山おろしの風のように、つらさのほうが激しくなれとは祈らなかったのに。

語釈

憂かりける
つれなかった。冷たかった。
初瀬
長谷寺のある地。観音に願をかける所として知られた。
山おろし
山から吹き下ろす激しい風。
ものを
〜のに。

背景と読みどころ

つれない人が振り向くようにと観音に祈ったのに、かえって冷たさのほうが激しくなった。祈りが裏目に出た、という歌である。

山おろしの激しさが、そのまま相手の態度の激しさに重なる。祈った場所の風が、祈った当人に吹きつけている。

『千載和歌集』の恋の部に、「祈れども逢はざる恋」という題で詠まれた歌として載る。

作者

源俊頼(一〇五五〜一一二九)。七十一番の大納言経信の子。新しい趣向の歌を試み、『金葉和歌集』を撰んだ。