憂かりける人を初瀬の山おろしよ はげしかれとは祈らぬものを
現代語訳
つれないあの人が振り向くようにと初瀬の観音に祈った。山おろしの風のように、つらさのほうが激しくなれとは祈らなかったのに。
語釈
- 憂かりける
- つれなかった。冷たかった。
- 初瀬
- 長谷寺のある地。観音に願をかける所として知られた。
- 山おろし
- 山から吹き下ろす激しい風。
- ものを
- 〜のに。
背景と読みどころ
つれない人が振り向くようにと観音に祈ったのに、かえって冷たさのほうが激しくなった。祈りが裏目に出た、という歌である。
山おろしの激しさが、そのまま相手の態度の激しさに重なる。祈った場所の風が、祈った当人に吹きつけている。
『千載和歌集』の恋の部に、「祈れども逢はざる恋」という題で詠まれた歌として載る。
作者
源俊頼(一〇五五〜一一二九)。七十一番の大納言経信の子。新しい趣向の歌を試み、『金葉和歌集』を撰んだ。