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あまはらふりさければ春日かすがなる 三笠みかさの山にでし月かも

安倍仲麿あべのなかまろ  007

現代語訳

大空をはるかに見わたせば月が出ている。あれは故郷の春日、三笠の山に出ていたあの月なのだろうか。

語釈

天の原
広々とした空。
ふりさけ見れば
遠くを仰ぎ見ると。
春日
今の奈良市春日のあたり。
三笠の山
春日の地にある山。

背景と読みどころ

唐に渡っていた作者が、帰国を前に異国で月を見て詠んだと伝えられる。今見ているこの月は、故郷の三笠山に出ていたあの月なのだろうか、という歌である。

仲麿は結局帰ることができなかった。船が流されて南方に漂着し、ふたたび唐へ戻って、その地で生涯を終えている。

上の句が空の広さで、下の句が故郷の地名で埋まる。あいだにある距離が、そのまま歌の形になっている。

作者

安倍仲麿(六九八〜七七〇)。若くして遣唐留学生として唐に渡り、そのまま唐の朝廷に仕えた。李白や王維と交わりがあったと伝えられる。