嵐吹く三室の山のもみぢ葉は 竜田の川の錦なりけり
現代語訳
嵐の吹く三室の山の紅葉が散って流れ、竜田の川の錦となっていた。
語釈
- 三室の山
- 奈良県にある山。神の鎮まる山とされた。
- もみぢ葉
- 紅葉した葉。
- 竜田の川
- 三室山のふもとを流れる川。
- 錦
- 色糸で模様を織り出した、美しい織物。
背景と読みどころ
山の紅葉が散って川に浮かび、そのまま錦になる。山と川、木と水を、一枚の布としてつなげている。
十七番の業平の歌と同じ竜田川の紅葉を詠んでいるが、こちらは驚いてみせるのではなく、静かに言い切っている。
『後拾遺和歌集』の秋の部に載る。
作者
能因法師(九八八〜没年不明)。俗名は橘永愷。出家して各地を旅し、歌に詠まれた土地を訪ね歩いた。