心にもあらでうき世にながらへば 恋しかるべき夜半の月かな
現代語訳
本意ではないまま、このつらい世に生きながらえたなら、きっと恋しく思い出すのだろう。今宵のこの夜半の月を。
語釈
- 心にもあらで
- 本意ではないまま。
- うき世
- つらいこの世。
- ながらへば
- 生きながらえたなら。
- 夜半の月
- 夜中の月。
背景と読みどころ
眼を病み、退位を迫られていた頃の歌とされる。
いま見ている月を、これから「恋しくなるだろう」と言う。過ぎたことを惜しむのではなく、未来から今を惜しんでいる。
『後拾遺和歌集』の雑の部に載る。
作者
三条院(九七六〜一〇一七)。眼を病み、藤原道長に迫られて位を退いた。その翌年に亡くなっている。