春の夜の夢ばかりなる手枕に かひなく立たむ名こそ惜しけれ
現代語訳
春の夜の夢ほどはかない戯れの手枕のために、何の甲斐もなく噂が立つのは惜しい。
語釈
- 夢ばかりなる
- 夢のようにはかない。
- 手枕
- 腕を枕として貸すこと。
- かひなく
- 甲斐もなく。「腕」を意味する「かひな」の音も重なる。
- 名こそ惜しけれ
- 評判が惜しい。
背景と読みどころ
春の夜の集まりで、枕がほしいと言った作者に、御簾の下から腕が差し出された。それに応じた歌である。
冗談に冗談で返した機知の歌で、実際の恋ではない。「かひな」に腕と甲斐を掛けたところが要である。
『千載和歌集』の雑の部に載る。
作者
周防内侍。十一世紀後半の歌人。後冷泉天皇から堀河天皇まで、四代にわたって宮中に仕えた。生没年ははっきりしない。