一覧へ戻る

もろともにあはれとおも山桜やまざくら はなよりほかにひともなし

前大僧正行尊さきのだいそうじょうぎょうそん  066

現代語訳

私と同じように、しみじみと思ってくれ、山桜よ。この山にはお前のほかに、私を知る者もいないのだから。

語釈

もろともに
私と同じように。ともに。
あはれと思へ
しみじみと思ってくれ。
知る人
自分を知っている人。

背景と読みどころ

山中で修行をしている途中、思いがけず桜に出会って詠んだ歌とされる。

人のいない山で、桜に「私を思ってくれ」と呼びかける。呼びかける相手が花しかいない、というその状況が、そのまま孤独を示している。

『金葉和歌集』の雑の部に載る。

作者

前大僧正行尊(一〇五五〜一一三五)。三条院の曽孫にあたる。若くして出家し、各地の山で厳しい修行を積んだ。