朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに あらはれわたる瀬々の網代木
現代語訳
明け方、宇治川の霧がとぎれとぎれに晴れていき、あちこちの瀬に立つ網代木が姿を現してくる。
語釈
- 朝ぼらけ
- 夜が明けて、ほのかに明るくなるころ。
- たえだえに
- とぎれとぎれに。
- あらはれわたる
- 一面に現れてくる。
- 網代木
- 網代を仕掛けるために川へ打った杭。氷魚を捕るのに使った。
背景と読みどころ
霧が晴れていくにつれて、川の杭が次々に姿を見せる。動いていくものを、その動きのまま歌にしている。
音も色もほとんど出てこない。見えてくるという一つの動きだけで作られた歌である。
『千載和歌集』の冬の部に載る。
作者
権中納言定頼(九九五〜一〇四五)。藤原定頼。五十五番の大納言公任の子。六十番の小式部内侍をからかった相手でもある。