めぐりあひて見しやそれともわかぬまに 雲がくれにし夜半の月かな
現代語訳
久しぶりにめぐり会いながら、それがあの人だと見定めるまもなく去ってしまった。雲に隠れた夜半の月のようだった。
語釈
- めぐりあひて
- 巡り会って。月が空をめぐる意にも重なる。
- それとも
- それだと。あの人だと。
- わかぬまに
- 見分けがつかないうちに。
- 夜半
- 夜中。
背景と読みどころ
幼なじみと久しぶりに会えたのに、それと見定めるまもなく行ってしまった。その慌ただしさを、雲に隠れる月に重ねている。
「めぐりあひて」「わかぬ」「雲がくれ」と、人について言う言葉と月について言う言葉が最後まで重なり続ける。どちらの話なのか、切り分けられない作りになっている。
作者
紫式部。十世紀後半から十一世紀にかけての人。『源氏物語』の作者。中宮彰子に仕え、宮仕えの日々を『紫式部日記』に書き残した。生没年は分かっていない。