あらざらむこの世のほかの思ひ出に 今ひとたびの逢ふこともがな
現代語訳
この世からいなくなる私の、あの世への思い出に。せめてもう一度だけ、あなたに逢いたい。
語釈
- あらざらむ
- 生きてはいないだろう。
- この世のほか
- あの世。
- 思ひ出に
- 思い出とするために。
- もがな
- 〜があってほしい。
背景と読みどころ
病が重くなったときに詠んだ歌とされる。死を前にして望むのが、もう一度逢うことだけだという。
「あらざらむ」といきなり自分の死を置いて、そこから逆算して、いま欲しいものを一つだけ言う。
『後拾遺和歌集』の恋の部に載る。
作者
和泉式部。十世紀後半から十一世紀の歌人。恋の歌に優れ、中宮彰子に仕えた。生没年ははっきりしない。