かくとだにえやは伊吹のさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを
現代語訳
これほど思っているとさえ言えない。伊吹山のさしも草ではないが、それほどとはご存じないだろう。この燃えるような思いを。
語釈
- かくとだに
- こうだとさえ。
- えやは
- 言うことができようか、いや、できない。「言ふ」と「伊吹」の音が重なる。
- さしも草
- よもぎ。灸に使うもぐさの原料で、伊吹山の産が知られた。
- さしも
- それほどとは。
背景と読みどころ
「え(言ふ)」「いぶき」「さしも」と、言葉が次々に重なっていく。技巧をこれでもかと詰め込んだ一首である。
もぐさは火をつけて燃やすものである。だから最後の「燃ゆる思ひ」まで、一続きにつながっている。
『後拾遺和歌集』の恋の部に載る。
作者
藤原実方(生年不明〜九九八)。歌人として知られたが、陸奥守として任地へ下り、その地で亡くなった。