八重葎しげれる宿のさびしきに 人こそ見えね秋は来にけり
現代語訳
幾重にも雑草が茂った荒れた家は寂しく、訪れる人の姿もない。それでも秋だけはやって来た。
語釈
- 八重葎
- 幾重にも生い茂るつる草。荒れた家のしるしとされた。
- 宿
- 家。すまい。
- 人こそ見えね
- 人の姿は見えないが。「こそ」を受けて「ね」で結び、下へ続く。
背景と読みどころ
荒れた邸に人々が集まって歌を詠んだときの作とされる。実際にはにぎやかな場で、荒れ果てた家の寂しさを題にして詠んでいる。
訪れる人はいないのに、秋だけは来る。人と季節を並べ、来ないものと来るものを対にしている。
『拾遺和歌集』の秋の部に載る。
作者
恵慶法師。十世紀後半の僧。播磨の国分寺の僧であったと伝えられる。