あはれとも言ふべき人は思ほえで 身のいたづらになりぬべきかな
現代語訳
気の毒だと言ってくれそうな人も思い当たらないまま、このまま虚しく死んでいくのだろう。
語釈
- あはれとも
- 気の毒に、とでも。
- 思ほえで
- 思い当たらないで。
- 身のいたづらになる
- むなしく死んでしまう。
背景と読みどころ
女に去られた後の歌とされる。同情してくれる人さえ思い当たらない、という言い方で、孤立の深さを示している。
恋の歌でありながら、相手を責める言葉が一つもない。恨みというより、独り言に近い。
『拾遺和歌集』の恋の部に載る。
作者
謙徳公(九二四〜九七二)。藤原伊尹。摂政・太政大臣にまで上った。謙徳公は死後に贈られた名である。