逢ふことの絶えてしなくはなかなかに 人をも身をも恨みざらまし
現代語訳
逢うことがまったく無いのであれば、かえってあの人を恨むことも、我が身を嘆くこともなかっただろうに。
語釈
- 絶えて
- まったく。下に打消を伴う。
- なかなかに
- かえって。むしろ。
- まし
- 〜だっただろうに。事実に反することを思い描く言い方。
背景と読みどころ
一度も逢えないほうがよかった、という言い方で、逢ってしまった後のつらさを表している。
「まし」は、実際にはそうでないことを想像するときに使う語である。だからこの歌は、すでに逢ってしまった人の歌になる。
『拾遺和歌集』の恋の部に、歌合で詠まれた歌として載る。
作者
中納言朝忠(九一〇〜九六六)。藤原朝忠。二十五番の三条右大臣定方の子。笙の名手でもあった。