恋すてふわが名はまだき立ちにけり 人知れずこそ思ひそめしか
現代語訳
恋をしているという私の噂が、もう早くも立ってしまった。誰にも知られないように思いはじめたのに。
語釈
- てふ
- 「という」。
- 名が立つ
- 噂になる。
- まだき
- まだその時ではないのに。早くも。
- そめしか
- 思いはじめたのだが。「こそ」を受けて「しか」で結んでいる。
背景と読みどころ
四十番と同じ歌合で競った歌である。どちらも「隠していたのに知られてしまった」という同じ趣向で、優劣がつけにくかった。
敗れた忠見は食事が喉を通らなくなり、それがもとで亡くなったという話が伝わる。ただし後の世に作られた話とみられている。
『拾遺和歌集』の恋の部に載る。
作者
壬生忠見。十世紀の歌人。三十番の壬生忠岑の子。身分は低かったが、歌の名手として知られた。