忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな
現代語訳
忘れられる我が身のことは何とも思わない。ただ、神に誓ったあの人の命が惜しまれてならない。
語釈
- 忘らるる
- 忘れられる。
- 身をば思はず
- 我が身のことは何とも思わない。
- 誓ひてし
- 神に誓った。
背景と読みどころ
心変わりを責めるかわりに、あなたの命が心配だ、と言っている。神に立てた誓いを破れば罰があたる、と信じられていたからである。
表向きは相手を思いやる言葉でありながら、その裏で、裏切ったのはあなただとはっきり突きつけている。
『拾遺和歌集』の恋の部に載る。
作者
右近。十世紀前半の女性。醍醐天皇の中宮に仕えた。伝記は分かっていないことが多い。