ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ
現代語訳
日の光がこんなにも穏やかな春の日に、どうして花は落ち着かず散っていくのだろう。
語釈
- ひさかたの
- 「光」「空」「月」などにかかる枕詞。
- のどけき
- のどかな。穏やかな。
- しづ心
- 静かに落ち着いた心。
- らむ
- 「〜なのだろう」。目の前のことについて、その理由を推し量る言い方。
背景と読みどころ
上の句はひたすら穏やかで、下の句だけが落ち着かない。この対比だけで出来ている歌である。
「しづ心なく」と言っているのは桜のことだが、散るのを惜しんで落ち着かないのは、見ている側の心でもある。
『古今和歌集』春下に収められている。
作者
紀友則(生年不明〜九〇七頃)。紀貫之のいとこにあたる。『古今和歌集』の撰者の一人に選ばれたが、編纂の途中で亡くなったとされる。