一覧へ戻る

朝(あさ)ぼらけ有明(ありあけ)の月(つき)と見(み)るまでに 吉野(よしの)の里(さと)に降(ふ)れる白雪(しらゆき)

坂上是則(さかのうえのこれのり)  031

現代語訳

明け方、有明の月の光かと見まがうほどに、吉野の里に白雪が降り積もっている。

語釈

朝ぼらけ
夜が明けて、あたりがほのかに明るくなるころ。
見るまでに
見まちがえるほどに。
吉野の里
今の奈良県吉野。雪の深い地として詠まれてきた。

背景と読みどころ

明け方のほの明るさのなかで、白い雪が月の光のように見える。色の少ない、白と白だけの歌である。

「有明の月と見るまでに」は、実際に月が出ているのではなく、雪の明るさを月にたとえた言い方である。

『古今和歌集』の冬の部に載る。

作者

坂上是則。九世紀後半から十世紀初めの歌人。坂上田村麻呂の子孫と伝えられ、蹴鞠の名手でもあったという。