有明のつれなく見えし別れより 暁ばかり憂きものはなし
現代語訳
明け方の月が素っ気なく見えた、あの別れのとき以来、暁ほどつらいものはない。
語釈
- 有明
- 夜が明けても空に残っている月。
- つれなく
- 素っ気なく。冷たく。
- 暁
- 夜明け前の、まだ暗い時分。
背景と読みどころ
「つれなく見えし」のが月なのか、別れた相手なのか、古くから両方に読まれてきた。どちらで読んでも、明け方のつらさは変わらない。
男が女のもとから帰るのは夜明けである。だから暁は、この時代の恋の歌では、つらさの時刻として決まっている。
『古今和歌集』の恋の部に載る。後の世に高く評価された一首である。
作者
壬生忠岑。九世紀後半から十世紀初めの歌人。『古今和歌集』の撰者の一人で、歌についての論も残している。