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有明ありあけのつれなくえしわかれより あかつきばかりきものはなし

壬生忠岑みぶのただみね  030

現代語訳

明け方の月が素っ気なく見えた、あの別れのとき以来、暁ほどつらいものはない。

語釈

有明
夜が明けても空に残っている月。
つれなく
素っ気なく。冷たく。
夜明け前の、まだ暗い時分。

背景と読みどころ

「つれなく見えし」のが月なのか、別れた相手なのか、古くから両方に読まれてきた。どちらで読んでも、明け方のつらさは変わらない。

男が女のもとから帰るのは夜明けである。だから暁は、この時代の恋の歌では、つらさの時刻として決まっている。

『古今和歌集』の恋の部に載る。後の世に高く評価された一首である。

作者

壬生忠岑。九世紀後半から十世紀初めの歌人。『古今和歌集』の撰者の一人で、歌についての論も残している。