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春過ぎて夏にけらし白妙しろたへ ころもほすてふあめ香具山かぐやま

持統天皇じとうてんのう  002

現代語訳

春が過ぎて、もう夏が来たらしい。真っ白な衣を干すという、あの天の香具山に。

語釈

けらし
「〜たらしい」。断定を避けて推し量る言い方。
白妙
楮の繊維で織った白い布。まっさらな白さをいう。
てふ
「〜という」。伝え聞いたことを示す。
天の香具山
大和三山の一つ。奈良県橿原市にある小さな山。

背景と読みどころ

夏が来たことを、山に干された白い衣で知る。歌に出てくる色は、衣の白だけである。

『万葉集』には「春過ぎて夏来たるらし白妙の衣干したり天の香具山」の形で載る。百人一首の形は後の時代に整えられたもので、「けらし」「てふ」と推量や伝聞が重なり、目の前の景色から一歩引いた言い方になっている。

衣が干してあるのを実際に見たのか、そういうものだと聞いているだけなのか。そこが曖昧なまま、白さだけが残る。

作者

持統天皇(六四五〜七〇二)。天智天皇の皇女で、天武天皇の后。天武の死後に自ら位に就き、藤原京へ都を移した。