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秋の田のかりほのいほとまをあらみ わが衣手ころもでは露にぬれつつ

天智天皇てんじてんのう  001

現代語訳

秋の田のかたわらに建てた仮小屋は、屋根に葺いた苫の目が粗い。だから私の袖は、露に濡れていく。

語釈

かりほの庵
刈り取った稲を守るために、田のそばへ仮に建てた小屋。「かりほ」には「刈り穂」の音も重なる。
菅や茅を編んで作った覆い。屋根や壁に使う。
あらみ
目が粗いので。「〜を〜み」で理由を表す言い方。
衣手
袖のこと。

背景と読みどころ

百人一首はこの歌から始まる。秋の田を見張る粗末な小屋で、編み目の粗い屋根から夜露が落ちてきて袖を濡らす。そんな情景が歌われている。

ただし、この歌が本当に天智天皇の作かどうかは分かっていない。『万葉集』によく似た作者未詳の歌があり、それが後の時代に天智天皇の作として伝えられたと考えられている。

それでも巻頭に置かれたのは、田を守る帝という姿が、百首の始まりにふさわしいと見られたからだろうか。

作者

天智天皇(六二六〜六七一)。中大兄皇子と呼ばれた頃に蘇我氏の本宗家を倒し、政治の仕組みを作り替えた。都を近江大津宮に移し、その翌年に即位している。