住の江の岸による波よるさへや 夢の通ひ路人めよくらむ
現代語訳
住の江の岸に寄る波の、その「よる」ではないが、夜までもどうして夢の通い路で人目を避けるのだろう。
語釈
- 住の江
- 今の大阪市住吉のあたりの海辺。
- よる
- 波が「寄る」と、「夜」を掛けている。
- 夢の通ひ路
- 夢のなかで相手のもとへ通う道。
- よくらむ
- 避けているのだろう。
背景と読みどころ
昼は人目があるから逢えない。それは分かる。だが夢のなかでまで、どうして人目を避けるのか、という歌である。
当時は、思う相手が夢に現れるのは、相手のほうが自分を思っているからだと考えられていた。夢にさえ来ないというのは、そういう理屈になる。
『古今和歌集』の恋の部に、歌合で詠まれた歌として載る。
作者
藤原敏行(生年不明〜九〇一頃)。歌のほかに書にも優れ、能書家として名を残した。