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ちはやぶる神代かみよも聞かず竜田川たつたがは からくれなゐにみづくくるとは

在原業平朝臣ありわらのなりひらあそん  017

現代語訳

神々の時代にも聞いたことがない。竜田川が水を、唐紅に括り染めにするとは。

語釈

ちはやぶる
「神」にかかる枕詞。荒々しく勢いのあるさま。
神代
神々が生きていたという遠い昔。
竜田川
奈良県を流れる川。紅葉を詠むときの土地として、古くから歌に使われてきた。
からくれなゐ
唐から伝わった、濃く鮮やかな紅色。
くくる
括り染めにする。布を絞って染め分ける技法。

背景と読みどころ

川面を紅葉が埋め、水が絞り染めのように紅く分かれて見える。それを「神々の時代にも聞いたことがない」と大げさに驚いてみせた歌である。

『古今和歌集』の詞書によれば、これは実際の川を見て詠んだ歌ではない。屏風に描かれた竜田川の絵を題にして作られたものである。

絵を前にした即興と分かって読むと、大げさな驚き方のほうが趣向だったことになる。

作者

在原業平(八二五〜八八〇)。平城天皇の孫にあたる。六歌仙の一人で、『伊勢物語』の主人公はこの人がもとになったと考えられている。