君がため春の野に出でて若菜つむ わが衣手に雪は降りつつ
現代語訳
あなたのために春の野へ出て若菜を摘んでいる。その私の袖に、雪が降りかかっている。
語釈
- 君
- あなた。この歌を贈る相手。
- 若菜
- 春の初めに摘む食用の草。食べると邪気を払うとされた。
- 衣手
- 袖のこと。
- 降りつつ
- 降り続けている。
背景と読みどころ
人のために若菜を摘む、その袖に雪が降りかかる。寒さを言いながら、それを苦にする調子はない。
若菜摘みは新春の行事で、摘んだ若菜を人に贈るのは、相手の健やかであることを願う心を表した。
『古今和歌集』の春の部に、まだ即位する前の作として載る。
作者
光孝天皇(八三〇〜八八七)。五十五歳で即位した。それまでは臣下として過ごしており、身近な暮らしを詠んだ歌が残っている。