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きみがため春のでて若菜わかなつむ わが衣手ころもでゆきりつつ

光孝天皇こうこうてんのう  015

現代語訳

あなたのために春の野へ出て若菜を摘んでいる。その私の袖に、雪が降りかかっている。

語釈

あなた。この歌を贈る相手。
若菜
春の初めに摘む食用の草。食べると邪気を払うとされた。
衣手
袖のこと。
降りつつ
降り続けている。

背景と読みどころ

人のために若菜を摘む、その袖に雪が降りかかる。寒さを言いながら、それを苦にする調子はない。

若菜摘みは新春の行事で、摘んだ若菜を人に贈るのは、相手の健やかであることを願う心を表した。

『古今和歌集』の春の部に、まだ即位する前の作として載る。

作者

光孝天皇(八三〇〜八八七)。五十五歳で即位した。それまでは臣下として過ごしており、身近な暮らしを詠んだ歌が残っている。