陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに 乱れそめにし我ならなくに
現代語訳
陸奥のしのぶもじずりの乱れ模様のように、私の心は乱れはじめた。誰のせいだろう。私のせいではないのに。
語釈
- 陸奥
- 今の東北地方。
- しのぶもぢずり
- 陸奥の信夫の地で作られた、乱れ模様の摺り染めの布。
- 乱れそめにし
- 乱れはじめた。「初め」に布を「染め」る音も重なる。
- 我ならなくに
- 私のせいではないのに。
背景と読みどころ
初句と二句は「乱れ」を引き出すために置かれた序詞である。布の模様の乱れが、そのまま心の乱れに移る。
「そめ」に「初め」と「染め」が重なるので、布の話と心の話が切れずに続いていく。
『古今和歌集』の恋の部に載る。『伊勢物語』の初段では、この歌をふまえた歌が詠まれる。
作者
河原左大臣(八二二〜八九五)。源融。嵯峨天皇の皇子で、六条河原に広大な邸を構えたことからこう呼ばれる。