ももしきや古き軒端のしのぶにも なほあまりある昔なりけり
現代語訳
宮中の古びた軒端に生えたしのぶ草。それを見てもなお偲びきれないほど、昔は遠い。
語釈
- ももしきや
- 「ももしき」は宮中のこと。多くの石を積んで造った御殿の意から。「や」は詠嘆を表す。
- 軒端
- 軒の先。
- しのぶ
- 軒や石垣に生えるシダの一種。「偲ぶ」を掛ける。
- なほあまりある
- いくら偲んでも、まだ足りない。
背景と読みどころ
百人一首の最後に置かれた歌。荒れた宮中の軒に生えたシダを見て、過ぎ去った時代を偲ぶ。
順徳院は後に父の後鳥羽院とともに鎌倉幕府へ兵を挙げ、敗れて佐渡へ流された。この歌が詠まれたのはそれより前だが、後の運命を知って読むと響き方が変わる。
巻頭の天智天皇の歌が田を守る帝の姿だったのに対し、最後は衰えた宮中を嘆く帝の歌で閉じられる。
『続後撰和歌集』の雑の部に載る。
作者
順徳院(一一九七〜一二四二)。後鳥羽天皇の皇子。承久の乱ののち佐渡へ移され、その地で亡くなった。和歌の作法をまとめた『八雲御抄』を残している。