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著作権

東京五輪と著作権〜インスタやツイッターなどSNSへ自撮り動画も投稿禁止〜

東京五輪と著作権〜インスタやツイッターなどSNSに自撮り動画も投稿禁止〜

4年に1度の世界的な祭典である「オリンピック」。そのオリンピックが2020年に東京で開かれます。前回の東京五輪である1964年大会を経験していない世代には、心待ちにしている方も多いかもしれません。

しかし、この東京五輪に関して、少し気になる規定があり、一部では「規定が厳しい」という声もあります。

その気になる規定とは、東京五輪の「著作権」に関することです。

著作権とは、表現物と表現したひとを守る権利のことで、インスタグラムやツイッターなどSNSが浸透したネット社会では、著作権は誰もが関連した権利であり法律となっています。

それでは、東京五輪の著作権の一体どこが問題なのでしょうか。以下、なるべく分かりやすく解説したいと思います。

インスタやツイッター、YouTubeなどの動画投稿は自撮りもストーリーも禁止

これが東京五輪の規定で議論になっている問題点です。

東京五輪に観客として参加するひとにとっては、その現場の臨場感も含め、動画を撮影し、インスタやツイッター、YouTubeなどのSNSや配信サービスにもアップし、日本中のひと、世界中のひとと共有したい、と思っているひとも少なくないでしょう。

東京オリンピックは、他県や遠方のひとびとにとっては少し遠くのできごと。だからこそ、SNSで共有されることで、より身近な体験として感じてもらうことも重要。

しかし、東京五輪の規定によれば、こうした行為は禁止です。

禁止というだけでなく、場合によっては著作権法違反という違法行為に罰せられることも考えられます。

東京五輪の規定の33条3項には、次のような文面があります。

チケット保有者は、会場内において、写真、動画を撮影し、音声を録音することができます。また、チケット保有者は、IOCが、これらのコンテンツに係る知的財産権(著作権法第27条および第28条の権利を含みます。)について、チケット保有者もしくはその代理人に対する金銭の支払や、これらの者から別途許諾を要することなく、単独で権利を保有することに同意し、さらにチケット保有者は、これらのコンテンツについて保有する一切の権利(著作権法第27条および第28条の権利を含みます。)をIOCに移転するとともに、その著作者人格権を行使しないことに同意します。

出典 : 東京2020利用規約「33条3項」

写真や動画の撮影自体は、禁止ではありません。写真禁止区域以外は撮影することができます。録音も可能です。

しかし、チケット保有者は、その写真や動画、録音した音声の著作権を全てIOC(国際オリンピック委員会)に移転する、という決まりになっています。著作者人格権も行使できません。

たとえ観客が動画や写真を撮っても(本来それは撮影者の著作物です)、一切の著作権を主張することができなくなる、ということです。

撮影はOK、でもSNS投稿は禁止。

それでは、その写真や動画の使用が全部禁止かと言うと、私的・非営利・非宣伝目的の場合のみ「許諾」されます。

著作権を譲り、一部はIOCによって許される、という形になります。

この私的・非営利・非宣伝目的というのは、たとえば家族や友人、知り合いなどに送る、といった行為です。LINEは、人数や関係性にもよりますが、家族など身近な存在ならぎりぎりセーフかもしれません。

LINEで送信する行為については、「特定かつ少数」であれば「公衆送信」の「公衆」にあたらず、問題ありません。例えば、2〜3人のグループLINEに共有する行為は、そのグループLINEが非公開の限定グループであれば問題ない。5〜6人とかになってくると、たとえ非公開の限定グループであっても「少数」と言えるかどうか微妙なところですね。少数か、多数かの区別は、何人以上が多数になるという明確な線は引くことはできず、その著作物の種類、性質、利用態様に従って異なると考えられています。(水野祐弁護士)

出典 :「著作権侵害、セーフとアウトの境界線はどこ?」水野祐×加藤貞顕×深津貴之

とは言え、ツイッターの鍵垢やLINEグループといったかなり限られた空間でも「制限の対象」になりうるようです。

いずれにせよ、撮影した動画は、公衆が見るツイッターやインスタにアップすることは禁止。インスタのストーリーも禁止。自撮りで背景が映り込んだり、選手ではなく応援席の雰囲気などを撮影した動画も基本的に禁止の模様。

自撮りまで禁止ということで、流石に厳しすぎるという声も。

とにかく、ざっくりと東京五輪に関して撮影したものの著作権は全てIOCが持ち、そのうち個人使用のみは許します、という話です。

チケット保有者は、会場内で撮影または録音された動画および音声については、IOCの事前の許可なく、テレビ、ラジオ、インターネット(ソーシャルメディアやライブストリーミングなどを含みます。)その他の電子的なメディア(既に存在するものに限らず将来新たな技術により開発されるものを含みます。)において配信、配布(その他第三者への提供行為を含みます。)することはできません。

出典 : 東京2020利用規約「33条4項」

最初は、写真も全て禁止かと思ったのですが、静止画である写真は(著作権はIOCが保有するものの)SNSなどへの公開も許されるようです。

こうした約束事は、ただの規約ではなく(書作権委譲の約束のため)「著作権侵害」になるので、動画をアップした際、場合によっては「刑事罰」もあります。

動画・音声の配信・第三者提供は不可なので、たとえば自分たちの応援する姿をYouTubeやインスタグラムのストーリーに上げることはできない(33条4項)。やれば、単なる規約違反ではなく著作権侵害となって、理論上は刑事罰もありうる。現実にどこまで取り締まられるかはまったく不明だが、念頭には置いておきたい。(福井健策弁護士)

出典 : 東京五輪チケット規約、IOCに有利すぎ? 福井弁護士が「知っておくべきポイント」解説

さすがにずっと会場に張り付いて大々的に生放送をネット配信で行う、ということでもないかぎり、刑事罰、ということはないとは思いますが、しかし、なぜこれほど厳しすぎる著作権に関する管理が行われるのでしょうか。

組織委員会によれば、「放映権」の問題が理由にあると言います。

組織委員会によると、この規約は「静止画は問題ないが、管理義務を負って放映権を販売している関係で制限しているもの」とのこと。

(中略)

SNSに投稿された動画・音声に対しては「削除を呼びかける可能性はある」。

出典 : 五輪会場で撮影した動画はSNS投稿できない? 東京五輪のチケット規約が話題、組織委員会に見解を聞く

テレビ局やスポンサーなどのオリンピック放映権の利益保護のために、個人のSNSの動画アップを禁止する、ということのようです。

組織委員によれば、こういう規約は過去のオリンピック大会にもあったとのこと。

それでは、いつから始まった取り組みなのでしょうか。

以下は、2018年開催の冬季オリンピック平昌五輪の際の撮影に関する規約の概要です。

①観客は静止画、動画、音声を撮ってもよいが、その知的財産権はIOCに帰属する
②観客はこれらのコンテンツの「一切の権利」をIOCに譲渡する
③そのうえで、IOCは観客に対し、写真等の使用権を、個人的、非商業目的の使用に限り許諾する。
④ただし、動画と音声に関しては、SNSを含むインターネット等に送信してはならない

出典 : 自撮り写真の著作権すら奪われる? インスタのストーリーも規制? 東京五輪チケット購入・利用規約の問題点

基本的に今回の東京五輪と一緒です。

この出典元のサイトでは、過去の大会との比較もありますが、2016年のリオ五輪では特に写真に関する規約はなく、2014年の冬季ソチ五輪(以下参照)では、少し似たような規約があります。

①観客は静止画を撮影してよいし、個人的、非商業目的であれば公表してもよい。
②動画は、家庭用ビデオカメラによるものであれば撮ってもよい。
③商業目的で画像、動画、音声の使用は禁止。
④非商業目的であっても、SNSを含めて、動画、音声の使用は禁止。

出典 : 自撮り写真の著作権すら奪われる? インスタのストーリーも規制? 東京五輪チケット購入・利用規約の問題点

テレビ局やスポンサーなどの放映権のために、個人の著作権を取り上げる、という方法は、平昌五輪から始まったまだ歴史の浅い方式のようです。

まとめ

最後に、この東京五輪と著作権の件についてざっくりとまとめたいと思います。

まず観客は、動画も写真も音声も(禁止区域以外は)撮影が可能です。

ただし、著作権はIOCに自動的に委譲される、という取り決めになっています。その上で、写真や動画、音声は、「個人的な利用」に関しては許されます。

また、写真については、インスタやツイッターにアップすることも禁止ではありません。

一方、会場内の動画や音声は、SNSやYouTubeなどへのアップは禁止で、「削除を呼びかける可能性がある」と言います。

ちなみに、規約では「会場内」という言葉が繰り返し登場しますが、「会場外」で行われるマラソンはこの規約の対象外なのかもしれません。

いずれにしても、これほどSNSが浸透した社会で、この禁止事項がどれほど認知され、守られるかと言うと疑問符はつきます。

若者や高齢者に限らず、外国人も含め、知らずに動画をアップするひとも多いのではないでしょうか。

テレビ局の放映権の問題が大きいということなので、テレビ局で進んで認知を促すと反発が怖いため、それほど積極的に情報発信はしないかもしれません。

目に余ったものがあれば、組織委員会側でその都度削除要請を出す、ということになるのでしょうか。

個人的には、もっと著作権的にも開放して、YouTuberやブロガー、インスタグラマーの他、一般の参加者も自由にそれぞれの視点からオリンピックを配信したほうが、東京五輪全体としては盛り上がる気がします。

一方で、撮影に関するトラブルも想定されるので、結果的に厳しく締める、という方法をとったのでしょう。

以下は、初心者でも分かりやすい、著作権に関するおすすめの書籍です。

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