著作権侵害18億円のアニメ無断公開で逮捕は、非親告罪の適用?
ファイル共有ソフトを利用し、人気アニメを違法でネット上に公開したとして、著作権法違反の容疑で韓国籍の男性が逮捕されました。
大阪府警の発表によれば、容疑者は、ファイル共有ソフト「ビットレント」を使用し、人気アニメ「ワールドトリガー」を無断で公開した疑いが持たれています。
また、約180作品のドラマやアニメを公開し、著作権の侵害額は18億円に上ると言います。
この事件で個人的に気になったのは、2点。親告罪か否か、ということと、被害額の算出方法です。
一般的に著作権侵害は親告罪であり、著作権者の訴えが必要になります。
著作権者のなかには、ある程度は著作権の侵害を許容したいと思っている作者や企業もいます。たとえば、ツイッターでアイコンに漫画のキャラを利用したり、本の一節を紹介するべく写真で掲載すると言うのも、厳密に言えば著作権侵害になります。

しかし、よほど悪質な行為(全ページ掲載したり、自分が作者だと偽るなど)でないかぎりは、宣伝にもなりますし、文化の発展に寄与する面もあるでしょう。
これが逆に少しでも著作権侵害を犯したら警察が自由に逮捕できる、というのでは相当息苦しい社会になってしまいます。
こうした事情もあり、著作権侵害は、基本「親告罪」となっています。
一方で、昨年末から「一部非親告罪化」も始まっています。これはTPPに伴って導入されたもので、賛否のある改正法案でした。
特に、日本の文化でもあるコミケ(同人誌など二次創作)や、パロディといったものまで非親告罪化で警察が自由に逮捕できるとなると、表現の自由が相当萎縮することになります。
コミケが出版業界を育む土壌になっていることも考えると、文化を守るための著作権の厳格化で文化が殺されてしまうことにもなりかねません。
議論の末、コミケは非親告罪化の対象から外れ、以下の三要件をすべて満たすもののみが非親告罪化になるという「一部非親告罪化」に決まりました。
①対価を得る目的又は権利者の利益を害する目的があること
②有償著作物等*について原作のまま譲渡・公衆送信又は複製を行うものであること
③有償著作物等の提供・提示により得ることが見込まれる権利者の利益が、不当に害されること
*有償で公衆に提供又は提示されている著作物等
対価を得る、あるいは著作者の利益を侵害する目的があり、原作の形のまま複製し、その結果として著作者の利益が害されること、というのが条件に提示されました。
もう少しざっくり言うと、お金目的で丸ごとコピーして配信したり販売して著作権者の利益が害されればアウトだ、という話です。
要するに、「海賊版」対策です。
今回のアニメの無断公開も、この三要件を満たした非親告罪化の対象だったのでしょうか。
読売新聞の記事(著作権侵害18億円、アニメ無断公開で韓国籍の男逮捕)によれば、その辺りの詳細は書かれていませんが、文言を見ると「東映アニメーションが著作権を持つ」という記述があります。
また、容疑者の動機は「皆に動画を観てほしかった」とあり、彼がこの著作権侵害で対価を得る、ないしは利益を害する目的があった、ということまでは分かりません。
そう考えると、もしかしたら東映アニメーションが被害を訴えていた、ということも考えられます。
もう一点、気になるのは、被害額の算出方法です。
一体どうやって18億円という数字を出したのでしょうか。この辺りも読売の記事には掲載されていませんでした。
一方で、産経新聞(170作品、18億円被害か アニメの違法公開事件)では、『ワールドトリガー』について250回ダウンロードされたことから、この作品に限って言えば3500万円という被害額を報じています。
また、同じ記事内では、他の作品も含めると7万回以上のダウンロード数で、被害総額18億円だと言います。
読売も産経も大阪府警への取材によるもののようですが、どういった計算で被害額が算出されているのかはちょっと分かりませんでした。
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